私たちは病気や怪我をした場合、病院に行き医者の診察を受け治療や入院することになる。この場合、患者は早く元の身体になり以前の生活を取り戻したいという願望があり、医者の言うことを良く守り指示に従う。一方、大切な人を失いグリーフを抱えた場合はどうだろうか。やはり、病気と同じように悲しみ、苦しみから解放されたいという欲求は当然起きてくるだろう。しかし、現実はどうだろうか。15年の「風の電話」活動から見えるところ、多くの方々が悲しみの感覚に不本意ながらも浸り続けているのではないだろうか。長い時間が過ぎ、やがてこのままではいけないと気づき、何とかこの苦しみから抜け出さなければと思うようになる場合が多いように思う。或いは、悲しみを抱えたまま孤立してうつ状態に陥る可能性もある。グリーフは怪我や病気と一緒で「心が傷ついた」状態です。しかし、薬や手術で治すことは出来ません。セラピストはいますが当事者自身が元の生命力に満ちた状態に戻りたいとという強い気持ちを持つことが大切になります。                            心理学者の河合隼雄先生は「心の傷を治すのは医者ではなく当事者であって、医者にできることは当事者が自分で治すのを見守り、助けることだけだ」と語っています。心の傷の再生には、①当事者が安心し自分の感情を思いきり吐き出せる場(環境)があること。②当事者の再生への強い心の持つこと。③寄り添い見守り支える人がいることが必要です。「風の電話」はこれら三つの条件を備え、黒電話で自問自答を通じて本来持っている自己治癒力に”気づき”を得るという、セラピストのいない自分で行うセラピーです。