癒しの底流には祈りがある

今日も台湾から7人、香港から1人が「風の電話」を訪れている。今年に入り欧米や東アジヤの国々の訪問が目立つようである。もっとも、今、世界中に50か所を超す「風の電話」が作られている状況にあり、ロシアのウクライナ侵攻、トルコ、シリアの地震など世の中不穏な現状があり、悲しみを抱える人々が増えている。

それら、人々の悲しみを癒すには人の持つ五感(見る、聞く、触る、味わう、嗅ぐ)に”感じる”という感覚が加わって初めて癒されるという気持ちになる。この何かを感じる感情が大事であり、皆が持っている気持ちの動きであるがそれは、表に出し表現することは難しく、祈りに通じるものがある。

「風の電話」には、「何も聞こえないが相手に伝わっているようだ」「何も見えないが相手を感じる」と、”感じる”ことができるという大きな特徴がある。

「風の電話」を訪れる方は亡くなった大切な方に祈りを捧げることで癒されていると言えると考えている。

東日本大震災から12年

愛する家族を失ったその傷は、12年たった今もありありと存在し、この時期になると疼き悲しみを呼び覚ます。

特に、思い出に触れた時、回復した傷跡に触った時のように神経が傷つき無感覚になっている感じとも違う。むしろ、むき出しになった神経が空気にさらされ、大声で叫びたいような生々しさを伴い湧きおこる。

それは、今いる現実から飛び出したいような、また傷跡を何かに覆われることを待っているような複雑な感覚に囚われているようにも感じられる。

いづれにしても、自分の心を自由にするも、拘束するも自分自身の心の持ち方次第なのだと思う。

 

3冊目の著書「風の電話と共に」出版

7月11日に3冊目の著書となる「風の電話と共に」を出版しました。

東日本大震災から11年が経ちました。昨年で10年、一つの節目を迎えたと思いましたが、被災者は未だ様々な問題を抱えており苦しんでいる方も多いのが現状です。特に、大切な人を失った悲しみは、時間と共に癒えていくというものではなく、個々人の被災状況によってその受け止め方は大きく異なり、 愛する家族を失ったその傷は、いつもありありと存在しています。

「風の電話」を通じての実践活動から「大切な人を失った方々はなぜ自分の殻に閉じこもるのか」「なぜ意識の向け換えが大切なのか」「どうすれば悲しみ苦しみを乗り越えられるのか」等々、感性だけで始めた活動にその後、自分なりの論理性を求めてきました。そしてこれまでの著作や思考を整理し深めることが「風の電話」をより理解してもらうことになるとの考えに至りました。

前著「風の電話 ― 大震災から6年、風の電話を通して見えること ―」「風の電話とグリーフケア」の二冊と多少重なる部分もありますが、これまで様々な場で語り書いてきたものに筆を加え、色々な方との話も引用しました。この本を読んでいただければ、11年にわたる「風の電話」の活動の片鱗がご理解頂けるものと思います。

全国の書店又はAmazonにて発売中です。

風が緑の空間に暮らす

今年は、桜の開花が例年に比べ1週間ほど早かった。

桜が終わり、風薫る新緑の季節を迎えました。私にとって1番好きな季節といえます。

今年は、大震災から10年と言うこともあり1月頃から取材対応に追われ忙しい日々が続きました。が、3.11が過ぎたとたんあの騒がしさは何処に行ったのか、何だったのかと思うほど静かになったと感じています。世の中も季節と同じように変化しており、その時々に興味の対象が変わるのは当然であり、震災の被害者であっても悲しみの中にとどまっている訳にはいかないのだと思っています。今の生活の中にこそささやかでも喜びを見つけ、それを楽しまなければならない。

コロナ禍の影響で自粛生活を余儀なくされていますが、そんな中でも自分の意識の持ち方次第で楽しくも、退屈にもなります。大きな自然のリズムに身をゆだねゆったりと、のんびりとこのゴールデンウイークを過ごしてみませんか。