風の電話音楽祭ライブ&トーク新緑の森に響きわたる

 

 

4月29日、30日の2日間にわたり、第1回「風の電話」音楽祭ライブ&トークが開催されました。両日とも天候に恵まれ、木の葉の間から漏れる日差しを浴びながらそれぞれに豊かな気持ちになった日を過ごすことが出来ました。関係者の皆様には心より感謝申し上げます。

この音楽祭は、「被災地における」、「被災者による」、「被災者のための」音楽祭として計画されました。被災地の3人(佐々木、大久保、臺)が実行委員会をつくり企画し、出演者の皆様の協力の基に実現することが出来ました手作りの音楽祭です。我々3人に共通するのはお金がないということです。ですから出演者の皆様には交通費、宿泊費、出演料なしでそれでも良ければとしてお願いしてきました。

我々の目指す「心の復興」とは、被災地の一人ひとりの皆さんが震災前に持っていた小さくても将来に夢と希望を持てる生きがいを取り戻すことだと思っています。今被災地は「明るい未来像」をもとめています。「明るい未来像」は夢を見ることから始まります。あるべき姿をしっかり思い描くにはそのための原動力が必要です。音楽を始めとする文化、芸術には夢を創造する力があります。文化や芸術がやるべきことは夢を届けるこ戸だと考えています。

かって、岩手の風土が生んだ宮沢賢治は、度重なる冷害、旱害に苦しむ農民の姿に苦しい辛いだけの労働ではなく、明るい楽しいものでなければならないと羅須地人協会で農村の青年男女を集め、音楽や演劇活動をしました。今、被災地は震災から7年が経過しましたが今も喪失の悲しみに辛い思いを抱えている人たちが多くいます。まさに賢治さんの時代と重なります。この音楽祭を通じ参加された皆様と共に苦しんでいる方々の悲しみに寄り添い、分かち合い、支え合う大切さを伝えていきたいと思います。

今回、遠くは和歌山県、大阪府、愛知県からの参加者もありました。また、手弁当で出演を了解して頂いた出演者の皆様には頭が下がります。大阪からの詩人里みちこさん、名古屋からのシャンソン歌手の堀田さちこさん、宮城から駆け付けたジャズ、シャンソンピアニスト金崎裕行さん、東京からのジャズトランぺッター臺隆裕さんとジャズピアニストの砂川玲誉さん。そして、地元大槌のミュージシャンNORISHIGEさん、キッズ合唱団のあぐどまめ、子どもたちのヴァイオリン教室エル・システマ、ブラスバンドの大槌ウインドオーケストラさん、釜石からのグループコスミス、ブラック・カマリンズさん、和楽器奏者の大久保正人さん本当に有難うございました、そしてご苦労様でした。

全出演者終了後、参加者、出演者交じり懇親パーティではさらに盛り上がりました。アーチスト同士がそれぞれセッションを約束し、また他の地域での出演を要請されたり、今度いつやるのか等々、第1回目としては大きな手ごたいを感じました。

2日目は、私と里みちこさんの講演会でした。私の講演内容は「風の電話から宮沢賢治へ」でした。「風の電話」は逢えなくなった人に想いを伝える電話です。感性と想像力の世界であり、それらを育てることにより、誰でもが絶望する状態から心の安定を取り戻すことが出来るのです。そして、誰でもが生きていく上でそれらが必要なことなのだと理解できるでしょう。また、森の図書館は本を読むだけの場所ではなく、本を読んで遊ぶところであり、遊びながら自ら学びとる姿勢をそだてるところです。感性を育て見えないものを観る、聞こえないものを聴けるようになり多方面から物事を考えるようになり始めて物事の本質がわかるようになります。宮沢賢治とのつながりは、人は皆自然の中の一部であり自然から人間としての生き方であり、動植物との接し方、農作物の保存の仕方等自然と共存していかなければならないこと。被災地の私たちは多くの人の助けがあって今生きていくことが出来ている。その私たちは無念の内に亡くなった方たち、これから生まれてくる子供たちに対してどの様に生きなければならないか責任があります。一つの道標として宮沢賢治の「利他の精神」があり他人のための役立つ、苦しんでいる人がいれば手を差し伸べるという生き方を目指していかなければならないという話でした。

また、里みちこさんの詩語りは、東日本大震災をテーマにした「天からの石文」の詩語りがメーンになり、会場にも5,5mの詩が展示され、自作の詩を読みながら創作時の思いや背景などを語りかけていました。里さんの作品の一つに「創から」には、傷つくことから/気づく/気づくことから築いてゆける/築く過程で絆ができる/創の裂けめから/新しい我が生まれて/命がだんだん/立つてゆく・・・・・が披露されていました。里さんと私は表現する方法は異なりますが、同じ感性を持ち、その感性を育てていかなければならないことを共に訴えていました。

二日間の参加者は、出入りを含めて300余名を数え予想以上の人たちの共感を得ることが出来ました。出演者、参加者、お手伝いして頂いた秀明会のボランティアの皆さん、大槌宮沢賢治研究会の皆さんありがとうございました。また、千葉県鎌ヶ谷の花を贈る会提供のクリスマスローズ苗を格安で販売し売上金と、現場での募金の合計4万円は槌音プロジェクトの、大槌に音楽ホールを創る活動資金と大槌宮沢賢治研究会の詩碑建立資金として半々に分けて活用させていただきます。皆さんの協力で有意義な楽しい音楽祭ライブ&トークを開催させて頂きました重ねてお礼申し上げます。有難うございました。