2冊目の著書「『風の電話』とグリーフケア」出版

10月31日2冊目の著書となる「『風の電話』とグリーフケア」。こころに寄り添うケアについてのタイトルで出版されました。慶應義塾大学医学部感染制御センターの矢永先生との編著になります。

1作目「『風の電話』は、なぜ創られたのか」、それを通してなにを見、なにを考え、なにをやろうとしているのかという内容になっています。そして、2作目となる著書は、風の電話を訪れた人々のメッセージを丁寧に拾い上げ、悲嘆のプロセスとグリーフケアについて多面的に検討しています。災害支援、遺族や看取りのケアに携わる援助者に必見の書となっています。

本文には米国の精神科医Van Dyke先生の「風の電話」はセラピストのいない、グリーフを抱えた方が自ら行うセラピーなのだと言う解説。また、ハーバード大学のIan Jared Miller教授の「なぜハーバード大学で『風の電話』を授業で取り入れているのか」等々独自の見解が語られています。

全国の書店又はAmazonにて発売中です。

 

 

静岡いのちの電話で心のインフラとしての「風の電話」講演会

11月4日(日)14:00~16:00静岡県もくせい会館(静岡県職員会館)にて、静岡いのちの電話主催の講演会、心のインフラとしての「風の電話」が開催されました。いのちの電話は自殺対策の一つとして、ボランティアらによって営まれているいのちの電話(日本いのちの電話連盟)が深い悩み・辛さを抱えて誰にも相談できずに自殺を考えるほどになっている人の話を聞くため電話を設けて、相談を受け付けている活動です。

いのちの電話は生きることに絶望している人たちを対象にし、片や風の電話は

大切な人を亡くし絶望している方たちに、それぞれ生きる希望を持っていただくための活動であり何か共通するところがあるのではないかと、お話しを引き受けた次第です。

風の電話によるグリーフケアは個人の持っている自然治癒力というか自己回復力を呼び覚ますセラピストのいない活動であり、グリーフを抱えた方が自ら行うセラピーです。人は人生において自分の物語を創り出し、それを生きていると考えることが出来ます。そして、最愛の人を失った時残された人の悲しみを癒すのは、人の持つ感性と想像力です。なぜなら、人間には失われたものを回復しょうとする精神の営みがあり、癒しには再開できる、再びつながれるという物語が必要となります。風の電話での自問自答は自らの物語の続きの創出であり、断ち切られた日々を一瞬でも取り戻すことになり、遺された人は物語の新たな展開を意識しなければならず、生きる力を得ることが出来るのではないでしょうか。

自殺対策は孤独対策だと言われていますが、私の風の電話で取り入れている人間の本来持っている力を活かすという、自然治癒力・自然回復力を取り入れたケアを考えた場合、孤独対策をもう一歩前に進め生き方対策が必要ではないかと考えます。生き方対策とは、要するに自分の存在のとらえ方の問題です、これを社会に出る前に訓練する必要があります。あらゆるスポーツにおいて練習なしで試合に出ることは怪我の もとであり、命にかかわる場合もあります。スポーツと同じように社会に出る場合に学校、その他での「生きるとは」「何のために生きるか」など個人の生きる使命など明らかにしておくべき必要があると考えています。そうすることにより世の中に受け入れられない状況が出来ても挫折や絶望することなく、自分の使命にチャレンジできるのではないだろうか。また、人間は自然の中で進化してきました。緑に触れることで災害、事故等で傷ついた心を開放し、癒されることは科学的にも立証されています。ドイツ発祥と言われるクラインガルテン、ロシアのダーチャ等、空き地を利用した市民農園を通じたコミニケションの場を活用した孤独対策が望まれます。それらの対策後の最後の砦として、いのちの電話活動で誰も自殺で命を失わせないという活動が望まれるのでは。という話をしています。

2枚目の写真は、岐阜県自死遺族の会「千の風の会」のカメラマン三浦氏と一緒に。

岩手日報文化賞の受賞について

報告が大分遅くなりましたが去る11月3日、岩手日報社より各分野で活躍され、本県の発展に貢献された方々に岩手日報文化賞並びに体育賞を贈り、その功績をたたえるとし、ベルガ―ディア鯨山の活動が評価され文化賞社会部門を受賞しました。

「風の電話」という場については、深い悲しみの中にある方々が自分自身との心の対話によって混乱している思考を整理し、本来持っている自分の生命力を取り戻すため、自分が主体的に行動することを促して行くところであり、グリーフを抱えた人たちが独自で行うセラピーと言える。自分自身に語り掛けることは自己の発見であり、自己意識が言葉という形で現れることで断ち切られた思いをつなぐことができる。悲しみ、苦しみ絶望感から、つながることが出来るという希望の光を持つことが自らを納得させ、悲しみや苦しみから解放され、癒されると感じ意識の向け換えが出来るのではないだろうか。

また、被災地は今明るい未来像を求めており、明るい未来像は夢を見ることから始まります。将来のあるべき姿をしっかり思い描くには原動力となるものが必要であり、音楽を始めとする文化芸術活動にはその力があります。そして、それを届けることが大切であり、長期的な活動になることから将来を託す子どもを含めた音楽祭や読み聞かせ会、児童書を集めた「森の図書館」活動等が評価されたようです。

この度の受賞は支援してくれる皆さまを含めた活動に対するものだと思っています。よって、副賞の30万円は北海道 地震被災地に義援金として全額寄付いたしました。どうぞご了解して頂きたいと想います。

 

「風の電話」で鎮魂のジャズ演奏

 

昨日10月20日に大槌町「おしゃっち」で日系米国人ジャズミュージシャン AKIRA TANA&OTONOWAの東北・熊本応援コンサートがあった。終了後サプライズがあり、ベルガ―ディア鯨山の「風の電話」前で演奏をしたいということになった。夕方になり寒さが気になったが、米国からのメンバー10数名と、東京からのサポーター10名ほどが鯨山にやってきて、早速楽器のセッティング。ジャズ演奏が始まった。メンバーの童謡、民謡、歌謡曲などの日本のメロディーを骨太なアレンジのアメリカン・ジャズで演奏する独特のサウンドは日米で絶賛されている。

屋内と違い、響きはないものの音が鯨山の森に吸収され、自然に溶け込まれていくようだった。まさしく「風の電話」を訪れた方々、その電話の相手、亡くなられた人たちに届くかのように・・・・。

散歩途中の人も、犬も立ちより静かに聞き入っていた。そして、遠くでは鹿やキツネも鳴いていた。

 

「風の電話」活動に東北みらい賞受賞しました

去る9月30日、遠野市土淵遠野みらい創りカレッジに於いて、第7回東北みらい創り賞授賞式が行われた。

東日本大震災被災当初より被災地に根差して継続的に復興活動をされ、顕著な実績を上げられている個人・団体の中から、防災・教育・メディア・文化の4分野で活躍するところを受賞対象にしている。

この活動組織があることすら知らなかった私は、事務局から連絡を頂いた時には戸惑いがありました「実態が分からないのに受賞なんかして良いのだろうかと」しかし、その組織のコンセプト「それぞれの地域に根差した活動を実践する人たちを支えていくことが、人材育成の観点から極めて重要だと考えています」を拝見した時に、こうした考え方が個人で長期的に活動していく上で大切になってくると感動を覚えました。

それにしても、活動を長期にわたり継続していけるのも、「風の電話」を応援してくれる皆さんの協力・支援があって初めて実現できることと、改めて感謝申し上げます。

尚、当日の様子はIBC 岩手放送「第7回東北みらい賞」表彰式及び講演の映像がweb上に公開されています。下記URL です。是非ご覧ください。

https://www.ibc.co.jp/event/summer_school/movielist.php