薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、ひかりけだかくかがやきながらその清麗なサファイア風の惑星を溶かそうとするあけがたのそら。
明けてそめゆく空の色を薔薇輝石で表現した賢治。
賢治が、大正8年2月2日の父あての手紙で大槌に薔薇輝石が産出することを記しています。これらのことを「賢治記念館」の佐藤 勝館長に確認した後、心当たりを探してみたいと考えていた。
「森の図書館」では、丁度賢治童話展を企画中であり、その目玉となる物として大槌ゆかりの薔薇輝石があれば朗読会、チェロコンサートとあわせて有意義なものに出来るだろうと思い、東建コンサルタントの前田氏に声かけた。彼も以前から興味を持っており二つ返事でOK。
いよいよ3月30日、探索に出かけた。坑道を三箇所見つけ内一つに懐中電灯をつけ入ってみた。足元は10cm位水が溜まり、相当深く、中で坑道が何箇所にも分かれ又、上下に分かれているところもある。入り口近くには、小鳥の巣があり、20mほど奥にはコウモリが棲息していた、電灯で照らしても微動だにせず逆さまにぶら下がっている。
坑道内部はいたるところに割れ目が入り崩壊の危険があることから、無理はしなかった。坑道を出て、側の水の枯れた沢でたまたま拾った石をハンマーで割ると僅かにピンクの色が見える。更に5,6個石を割ると、よりピンク色の濃い物が出てきた。
これが薔薇輝石か?、こんなに簡単に見つかるものなのか見たこともない石だけに目の前のピンク色に輝く石が薔薇輝石だとは半信半疑の気持ちだった。
欠片を大事に持ち帰り、サンドペーパーで磨いてみると確かに賢治が明けてそめゆく空の色と表現したピンク色、「間違いない薔薇輝石だ!!」その日の夕方から二人で居酒屋で祝杯をあげたことはいゆうまでもない。